今日はJohns Hopkins大学のCenter for the Talented Youth(通称CTY)について紹介したいと思います。
CTYとは
CTYは、アメリカのJohns Hopkins大学が作ったギフテッド教育機関です。
アメリカではギフテッド向けの教育(Gifted and Talented Educationを略して、GATEプログラムと呼ばれています)がさかんにおこなわれています。エリアごとに行われている公的なプログラムのほか、私立大学が実施しているプログラムも色々あって、CTYのほか、Duke大学のTalent Identification Program(通称TIP)や、Northwestern大学のCenter for Talent Development(通称CTD)などがよく知られています。
なかでもCTYは1979年設立と一番の老舗で、メジャーな存在です。Google やFacebookの創業者、Lady Gagaなど、出身者に有名人も多いです。
ちなみにギフテッドというと、日本では「天才」のイメージが強いですが、アメリカの場合はもう少し広い概念のようです。上記のどの教育機関も、上位3-5%程度をターゲット層と想定しているようです。
CTYの場合、試験を受けてメンバー(通称CTYer)になると、CTYが主催するサマーキャンプやオンライン講座などを受講することができます。講座のなかには終了すると高校や大学の単位として認定してもらえるものもあります。アメリカの難関校に通っている生徒の場合、CTYやDIPで、Advance Placement (AP)という大学レベルの講義の単位を取得し、大学受験のときにアピール材料として使うことが多いようです。またサマーキャンプは世界各地からセレクトされた優秀なお子さんが集まり、がっつり勉強し、遊ぶというもので、かなり評判がよいです。ただしお値段もセレブ。2-3週間で50万円くらいしたと思います。
CTYの魅力は、年齢にかかわらずどんどん学びを進められる点です。日本の教育は「受験」があるので、たとえば小学生なら、中学受験に向けて小学校で学習する範囲のことをぐるぐる深くやるのが基本ですが、アメリカの場合はできる子はどんどん先に進んでいくという違いがあります。学年に関係ない学びを実現させるためにあるのが、CTYのようなギフテッド・プログラムです。
CTYerになるには
CTYのメンバーになるには、指定のテストで一定の成績をとることが必要です。
年少者の場合、WISCなどの知能テストで認めてもらえるようですが、通常はSCATというCTY独自のテストを受験することが必要です。(SATなどの点数でもOKですが、小中学生がSATを受けるのは現実的ではないので、SCAT受験でqualifiedされる方が大半と思われます。)
SCATを受験するにあたっては、まずCTYのHPでタレントサーチというものに登録し(確か登録フィーが60USDくらいかかったと思います)、その上で外部機関でSCATを受験します。タレントサーチの登録料とは別に、SCATの受験料も60USDくらいかかったはず。ただ、たまに受験料半額の謎のキャンペーン(?)をやっています。
SCATは2020年9月現在、COVID-19の影響で、オンラインで自宅受験可能です。オンライン受験の場合、監視用ソフトウェアをPCにインストールしたり、テストを受ける室内をビデオ撮影して提出したりと、受験までの手続きとルールが煩雑です。PCの操作があまり得意でない方は、外部試験会場で受験される方がよいと思います。
ちなみに我が家もオンラインで自宅受験しましたが、トラブルがあり、苦労しました。ソフトをインストールし、室内の録画動画を提出し、サンプルテストを受けて・・ここまではうまくいきました。しかしそこから一向に試験がはじまらず。何度やってもパスワードがエラーになってしまって、本テストの画面に移行できないのです。1時間くらいPCと格闘してもうまくいかず、夕食の時間になってしまったので、長女を退室させてリビングでごはんを食べさせることにしました。そして、私がマニュアルを再確認しながら1人でPCをいじっていたら、なぜか突然、試験がスタート!!!「・・・え、はじまった?はじまってるー!」というわけで、慌てて長女を呼び戻し、部屋の扉をバタンと閉め、あとは本人に対応させました。試験がいったんはじまると、第三者のサポートは絶対NG。すべて録画されていますので、受験者本人もPCのカメラに映らない範囲に移動したり不審な行動をとったりすれば、失格となります。そんなわけでバタバタしていたら、紙と鉛筆を渡すのを失念してしまいました。室内撮影のときに机の周りを一掃して、そのままの状態だったのです。そんなこんなで、長女は筆記具なしで試験を受けるという事態に。ごめんよ長女・・・。
合格したからよかったものの、これで落ちていたら、高い受験料が~ガガガガガガ・・・怒怒怒怒・・・となっていたと思います。あとで聞いたところによると、ソフトウェアのトラブル、結構多いようです。次回受けることがあったら、我が家は絶対、試験会場での受験を選びます。
SCATとは
次に、このSCATという試験について少し説明しておきたいと思います。
科目は、Verbal(英語)とQuantitative(算数)の2教科です。
CTYのタレントサーチでの受験の場合、自分の実際の学年よりも上のSCATを受けることになります。
2-3年生 → 4-5年生用のテスト
4-5年生 → 6-8年生用のテスト
6年生以上 → 9-12年生用のテスト
こんな感じですが、SCATは学習到達度テストではないので、9-12年生用のテストでも小難しい数学の問題などは出てこず、小学生レベルの知識で解けるようになっているようです。ただし問題数は多く、それを限られた時間でちゃちゃっとリズミカルに解いていかなければなりません。数字と言語の両面から脳の事務処理能力をチェックしている感じです。テストのサンプルはCTYのホームページで見ることができます。
SCATは知能テスト的な側面が強いので、事前準備をしてもあまり意味がないといわれています。我が家は時間がなかったこともあり、CTYのHPにあるサンプル問題をちらっと見せただけで試験を受けましたが、特に問題はありませんでした。ただアメリカでは、「うちの子をCTYerに!(ギラリ)」というご家庭のためのSCAT対策塾などもあり繁盛しているようですし、ドリルなどもあるようなので、類似問題をたくさん解いて特訓をすれば、多少は合格確率があがるのだろうと思います。IQテストも何度もやれば点数があがるのと一緒ですね。SCATを受験できるのは年2回まで、受験料も高いので、心配な方は対策をしてから受けるのもありかもしれません。
そしてSCATの結果、どちらかの科目で合格ラインに達していれば、CTYerになることができます。合格ラインには「CTYレベル」(2学年上)と「Advanced CTYレベル」(4学年上)の2種類があります。合格科目と合格ラインにより、受けられる講座が異なってきます。ざっくりいうと言語系の科目受講にはVerbalでの合格が、数学やサイエンス系の科目受講にはQuantitativeでの合格が必要です。
なお成績上位者は、High Honor(優秀賞)、Grand Honor(最優秀賞)が授与されます。ネット情報によれば、High Honorは上位25‐30%くらい、Grand Honorは上位10%くらいに入ればもらえるようでしたが、詳しいことはよくわかりません。ちなみに長女はHigh Honorをいただきました。Quantitative のスコアがGrade 12 の上位4%相当という好成績でした。エアメールで表彰状が届いて本人は喜ぶかと思いきや「えっ?鉛筆なしでボロボロだったのに?なんかの間違いじゃ・・??」と混乱していました。
CTYのオンライン講座の選び方
次にCTYのオンライン講座の選び方について少し解説したいと思います。
当初は詳しいことはよくわからずにいたので、まずは長女の担任の先生に相談してみました。長女の学校にはほかにもCTYerがいるので、数日でコメントが返ってきました。学校からいただいたアドバイスは次のとおりです。
・オンラインコースはsession basedとindividually basedがあるが、session basedは時間の制約がいろいろあり、学校の期末試験前などは大変なことになる。よってindividually basedをとること。
・期間単位でTuitionが決まっているので、複数科目を同時にとらないこと。1教科終わらせてから次の科目にenrollしないと無駄な出費が発生する。
・中学のうちは自分の興味のある分野のものを自由に受ける形でOK。高校になると大学受験との関係で戦略的に履修していくことが必要なので、履修科目を学校と相談すること。
またインターネット上にも色々情報が転がっていますが、結構びっくりだったのが、MathのカリキュラムはThinkwellという外部ベンダーが作成したものをそのまま使用しているという点です。(ただし全部のコースではないかもしれません。Thinkwellを使っているコースは説明ページにその旨が明記してあります。)CTYだと3か月で860USDするところ、Thinkwellだと12か月で100USDくらい。CTYは専属のチューターがつき質問可能、Thinkwellはチューターなしという違いがありますが、それを考慮しても金額が違いすぎます。というわけで、チューターなしでいいならThinkwellで受講すべきです。
CTYのいいところは、1人1人にチューターが付き、わからないところがあったらすぐに質問できるところにあります。コンタクトはメールが基本ですが、zoomなどでの面談も可能です。ただアメリカとは時差があるので、チューターのオフィスアワーは日本の早朝になっていることが多いです。チューターの人材はかなり吟味されていて、長女のチュータも、20年以上高校でScienceを教えていたというベテランの先生です。長女の質問は私にはチンプンカンプンなので、我が家はチューターにかなり助けられました。CTYの高い料金はこのチューター代の部分があるので、科目をチョイスするときには、チューターを十分活用できるかどうかという点を考慮された方がいいのかなと思います。
CTYでなくても
さて現在はCTYのカリキュラムで学んでいる長女ですが、今のコースが終了したら、少しお休みしようと思っています。
長女によると、内容は思ったほど難解ではないし、チューターの先生の解説も分かりやすいし、「勉強にはなっている」そうですが、なにせ分量が多いのでこなすのが大変とのこと。ただでさえ勉強に部活に学校行事にと忙しい中学生、CTYのコースのワークロードが負担に感じるようです。
CTYの授業料は3か月で860USD。もし3か月のコースを3か月内に終わらせることができなかった場合、1ヵ月あたり300USDを支払えば延長ができます。一方、3か月のコースを1か月で終わらせた場合、残りの2ヶ月分は追加料金なしで新しいコースをとることができます。すなわち、ホームスクールでCTYに全力投球の場合、かなりおいしいプログラムなわけですが、長女のように忙しい子にはコスパが悪いのです。実は来年度のSOH(Stanford Online Highschool)の単科コースへの出願も検討していましたが、こちらは1教科あたり週8-10時間程度のワークロードの模様、CTY以上にヘビーです。中学校生活と両立するのは到底無理なので、断念しました(CTY以上の難関なので応募していても不合格だった可能性も高いと思います)。今はあれこれ新しいことに手だしをするより、ドイツ語や中国語、学校の部活など、他のことに時間を割いた方が賢明な気がしています。
なお、CTYerの中には、DIPと併用している子もそれなりにいるし、その他の教育サービスを利用されている方も多い印象です。ネット上の情報ですが、CTYerがよく使っているサービスを参考までに下記に記載しておきます。
Outschool
Thinkwell(Math、Science)
Biochemistry Literacy(Science)
BYU online
Beast Academy(Math、小学生向け)
Mathnasium(Mathのチュータリング)
WhiteHat Jr(コーディングの個別指導)
Language Bird(語学)
Russian school of math(Math)
このうち我が家もすでに使っているのは、Outschoolです(別記事ご参照)。あとはWhiteHatはちょっと興味があるので、そのうち試してみようと思っています。日本でもコーディングの個別指導はありますが、大人向けのブートキャンプ的なものになるため、かなりお値段が高いです。WhiteHatはインドの会社なので、1コマ30USD前後とone-on-oneにしてはかなりお手頃な価格レンジです。
そういえば、算数についていえば、最近はアメリカでも公文が人気とどこかで聞いたんですが、CTYのコミュニティではほとんど聞きません。ド定番のKhan Academyもあまり聞きません。かわりに人気なのが通称RSMことRussian School of Math。なぜにロシア?めちゃくちゃ気になります。ロシアで算数というと、なぜか頭のなかでテトリスの音楽が鳴り始めるのは私だけでしょうか?長女についてはもう少し数学をブーストさせたいなと考えているものの、ロシア式はチャレンジングすぎるので、なにか日本のものでいいものがないか検討してみようと思っています。コスパ考えると、スタサプで先取りとかかなあ・・・。
以上、CTYの記事のつもりが、最後はテトリスになってしまいました。なんとなく敷居の高さを感じていたCTYですが、鉄●会とか日本のガチ勉強する中高生の通う塾の方が、多分いろんな意味ですごいんだろうな~というのが正直な感想です。でも自宅にいながら英語でハイレベルな専門科目の教育が受けられるというのは、我が家のような家庭にはすごく魅力的です。とりあえず一度qualifiedされておけば、いつでも授業が受講できるようなので、また本人の気が向いたときに受講させようと思っています。