ひとりごと

風船とばし(バルーン・リリース)と環境への影響

今日はバイリンガル教育とは全く関係のないネタです。

先日のこと、友人が、日本の小学校のイベントで600個の風船を飛ばしたとのことで、その様子をFacebookにアップしていました。手紙がつけられた沢山の色とりどりの風船が空に舞い上がる様子は壮観でした。「いいな~、うちの小学校でもやりたい」「素敵!」というコメントが相次いでいて、見ていて複雑な気分になりました。

私が住む欧州でも、風船は子供たちに大人気で、遊園地やお祭りの類では、あちこちで売られています。種類も日本より多く、凝った形のものやライトがついたものなどもよく見かけます。

でも、一斉に風船を空に放つようなイベントは、欧州に来てから一度も体験したことがありません。

「風船飛ばし用の風船は環境にやさしいものを使っているから大丈夫」と聞いたことがありますが、本当に環境への影響はないのでしょうか?

・・・というわけで、疑問に思ったので少し調べてみました。

日本バルーン協会の見解

日本語で検索をしてみたところ、まず最初に出てきたのは「日本バルーン協会」という団体のHPでした、ここでは風船飛ばしの環境の影響について、以下のように説明されていました。

小学生の社会の時間に習われたと思うのですがゴムの木の樹皮につけられた切り口からにじみ出てくる樹液をカップに集めたものが「ラテック ス=天然ゴム」です。したがってラテックスは日光や水によって分解される100%自然の原料。分解作用は空気に触れたとたんに始まります。酸化による変色 が分解過程の最初の兆候です。太陽光線にさらされると分解が始まりますが、自然界の微生物は暗闇の中でも天然ゴムを分解します。研究によると、同じ条件下 にある場合、ラテックス製の風船は樫の落葉とほぼ同じ速度で分解するという結果が出ています。

風船とばしについての資料より

A、北海道大学水産学部による父島沿岸の漂流物の研究報告をした荻教授は、「過去500点以上の外洋漂流物の中にゴム風船は認められませんでした。少なく とも、日本の報告例には海面に浮いた状態のゴム風船は一つもない。また魚網にかかり事故死した3,000~4,000羽の水鳥の胃からもゴム風船は認めら れませんでしたし、日本獣医大学での標本データにもゴム風船による死亡例はありません」と話している。

B、海亀に天然ゴムとビニールを給餌する研究では ”驚いた事に、どの海亀(5頭)も無色透明なビニールは食べなかった”と報告している。これは、もし脱 色したゴム風船が海面を漂っていたとしても海亀はクラゲと間違って食べないし、もし間違って食べたとしてもそのまま排出され無害であると言う事である。

まとめると、「ラテックス」という100%自然の材料を使っている風船は、日光や水によって分解されるため、紐や留め具も自然素材にすることなどいくつかの注意点を遵守すれば、全く問題はないとのことです。

しかしながら、同団体のHPを読んでいて、気になった点がいくつかありました。

①この「日本バルーン協会」は風船を販売する業者が会員となっている業界団体であること(ざっと見た限り、会員に上場企業は含まれていない模様)

②主張の裏付けとしていくつかの研究結果が紹介されているものの、出典が明記されておらず、信頼性の検証が困難であること

③最も重要なラテックス風船の分解速度について、実証研究や具体的なデータの提示がなされていないこと

 

ちなみに上記引用箇所で紹介されていたA「北海道大学」の研究ですが、そもそも北海道大学の水産学部に荻教授という方はいらっしゃいませんでした。どこかほかの大学に異動されたのかな。かなり古い研究報告なのでしょうか。しかし父島って・・・本土から1000キロ離れてますよね?

また、Bの海亀の実験も、誰がいつどのような実験をしたのか不明な上、「無色透明」「ビニール」と対象物がゴム風船とは全く違いました。検証数も5頭ときわめて少ないです。にもかかわらず、どうして「海亀は(風船を)クラゲと間違って食べないし、もし間違って食べたとしてもそのまま排出され無害である」という結論を導くことができるのか、私にはその論理が全く理解できませんでした。

以上のような感じで、全体的に根拠不明瞭で、論理が崩壊している説明が多いです。個人的には、日本バルーン協会のHPの説明を文面通りに受け取ることはできないように思いました。

 

Balloons Blow, Inc.の見解

次に英語で検索をしたところ、まず出てきたのがBallons Blowという団体のHPでした。バルーンリリースに反対する活動をしているアメリカの団体です。

同団体のHPでは、以下のような記載がありました。(※訳は私の方でつけました)

Natural latex may be biodegradable, but after adding chemicals, plasticizers and artificial dyes, how natural could it be? It may degrade after several years, but it’s surely not “biodegradable.”

天然のラテックスは生物分解性を有しています。しかしながら、化学薬品や、可塑剤、人工染料を添加しても、それは「天然のもの」と言えるでしょうか?ラテックス素材の風船は数年経過すれば劣化しますが、「生物分解性を有する」とは言えません。

Another claim is that so-called “biodegradable” latex balloons take the same amount of time to decompose as an oak leaf does. This is very misleading; oak leaves are very durable and can take four years to decompose! That means the balloons have plenty of time to injure or kill.

ほかにも、いわゆる「生物分解性を有する」ラテックスの風船は、樫の葉と同じくらいのスピードで分解されるという主張があります。これはミスリーディングな主張です。というのも、樫の葉というのは非常に丈夫で、分解されるのに4年かかる可能性があるからです。それだけの時間自然にかえらない風船だということは、その間に動物を傷つけたり殺したりする可能性が多分にあるということです。

同団体のHPでは、実際にフロリダの海岸に落下したラテックス風船のその後の観察記録が掲載されています。これをみると、ラテックス風船とはいっても、十分な高度に達せず細分化しないまま落下した場合、半年や1年では自然に戻らないことがよくわかります。

また、同HPでは、ラテックス風船で窒息死した海鳥の写真なども掲載されています。

https://balloonsblow.org/biodegradability-backyard-test/

まとめと所感

私は科学の専門家ではないので、どちらの主張が正しいのか検証する能力は持ち合わせていません。ただ、両者の主張を照らし合わせてみると、詳細なデータを提示しているBaloon BlowのHPの主張の方が信頼できるように感じました。

日本語で「風船とばし 環境」と検索すると、風船飛ばしを肯定する意見が記載されたwebサイトが過半数を占めます。風船飛ばし肯定派の方が論拠としているのは、大抵の場合、上記で紹介した日本バルーン協会のHPの記載です。内容の信頼性を検証しようともせず、インターネット上の情報を鵜呑みにして自己の主張の根拠とされている方が多いのには驚きを禁じ得ません。

一方英語で「ballon release environment」と検索すると、風船飛ばしの環境への悪影響を訴えるwebサイトが多数を占めます。日本語で検索するか、英語で検索するかで、得られる結論が大きく変わってくるのが興味深いですね。いやはやこういう例をみると、日本語のみの情報収集って怖いなと感じます・・・。

 

個人的には、いくら天然素材のものといえど、風船を大量に空に放つのは無責任な行為であり、やめるべきなのではないかと思います。「分解されるから大丈夫」といいますが、たとえば食べかけのおにぎりをハイキング途中で山中に捨てるのがマナー違反なことは争いがないことでしょう。どうしてがおにぎり投棄がNGで、風船飛ばしがOKなのか、私には理解できません。風船飛ばしって、私には、空に「ゴミ」をばらまいているようにしか見えないです。

色々書きましたが、小心者の私、さすがに友人に向かって「風船飛ばし、問題あるんじゃ・・?」とは言えずにいます・・。でも、もし子供たちの小学校で風船飛ばしが企画されるようなことがあったら、今回調べたことを根拠に、しっかり反対意見を述べようと思います。

 

少し話がそれますが、日本人は悲しいくらいに環境への意識が低いなと感じています。たとえば私の住んでいる国では、スーパーにエコバックを持たずに行くのは恥ずかしいことです。だから日本に帰ったときにスーパーに買い物に行くと、大量に渡されているレジ袋に軽い眩暈を感じます。日本はアメリカや中国などに比べると国や企業の環境対策は進んでいますし、たとえばゴミの仕分けルールなどもきっちりしていると思います。けど、個人の意識は超低空飛行です。ルールがあれば仕方なく守るという感じ。もっと1人1人が環境のことを真剣に考え、行動することが必要なのではないかと思います。

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