インターのICT教育から日本のプログラミング教育を考える

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2020年からプログラミング教育が小学校で必須になるということで、日本でもプログラミング教育に対する関心が高まっているようです。なかには、「英語の次はプログラミングをマスターさせないと!!!!」というご家庭もあるのだとか。

プログラミングについては、どこまで何をやることが必要なのか、まだあまり情報がないようなので、今回は、子供たちが通うインターでのプログラミング教育や、我が家の取り組みなどについて紹介してみたいと思います。

 

IBインターの小学生はどのようにプログラミングを学んでいるか

我が家の子どもたちが通う国際バカロレア(IB)のインターナショナルスクールでは、ICT(情報通信技術)が様々な場面で活用されています。

というわけで、まずは、子供たちのインターで、小学生へのプログラミング教育がどのように行われているのかを、紹介してみたいと思います。

まず最初に結論からいいます。

 

 


プログラミング、ほとんどやってません~

 

 

・・・。

 

 

期待して記事を読んでくださった方がいたら、すみません(汗)

以下、少し説明を補足します。(※あくまでも子供たちの通うIBインターの場合です。他校では違うかもしれません)

・日本の小学校相当の学年では、プログラミングはほとんどやりません。長女は全くやりませんでした。次女はGrade 2のときに数時間やったようです。使ったのは、Hour of Codeという無料サイト(詳細は下記記事をご参照ください)です。

・課外活動ではプログラミングを選ぶことができます。ただこちらも、使うのはHour of Codeです。プログラミングがどういうものか、さらっと学ぶだけです。

・Secondaryでは、高学年になれば選択科目でComputer Scienceがあり、プログラミングを学ぶこともできますが、全員が習うものではありません。また、課外活動でプログラミングがあるので、希望すればGrade 6からプログラミングを学ぶこともできますし、コンテストなどに出場したりする機会もあるようです。

Codingで英語を学ぶ:Hour of Code (Code.org)
今年の1月から次女が学校でCodingの勉強をはじめました。 「最近のインターの先生はプログラミングの知識まであるのか!すごい!」...

 

インターナショナルスクールにおけるICTの活用

一方、子どもたちのインターでは、かなり積極的にICTを授業に取り入れています。どんなことをやっているのか、学年別に整理して書いてみると、次のような感じになります。

Grade 2

2人で1台のiPadを使用します。

アプリを使用して学習をしたり、Raz-kidsで本を読んだりという感じです。

この時点ではまだ「iPadに慣れる」ということが中心で、授業のなかで使う時間は短いです。

 

Grade 3

3年生になると、リサーチにインターネットを使うようになります。使うのはGoogle Juniorという子供向けサーチエンジン。また、インターネットリテラシーについてもきっちり学びます。パスワードは人に教えてはいけませんとか、ネットに自分の写真をアップしてはだめとか、そういうことですね。この学習はInterlandというグーグルのサイトを使うことが多いです。

また、アプリを使ってアニメを作ったり、e-bookを作ったり、学内イベントのポスターを作ったりと、創作活動にiPadを使うようになります。アニメはToontastic、ポスターはピッコラージュ、プレゼン資料はExplaing Everythingというアプリを使っていました。

それから、自分のプレゼンをiPadで録画して、それを自分で見るということもよくやっていました。日本では学習発表は大勢の前でやるものですが、子どもたちの学校では、1人でiPadに向かってやって、録画されたものを自分や友達、先生や親が見て、あれこれコメントするというスタイルが多いです。

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Grade 4

iPadが1人一台になります。ただし自宅への持ち帰りはできません。

4年生になると、3年生以上に、ICTを使う場面がぐんと増えます。Google classroomというサイトでオンラインで宿題が出されるようになり、自宅にも子供が使えるPCが必須になります。

また、Grade 4では、ブラインドタッチを完全にマスターすることが必須とされています。このため、毎週タイピングの宿題が出て、時折テストも実施されます。タイピング練習はTyping Agentというソフトを使います。目標速度は25WPMです。(WPM=1分間に打てる単語の数です)

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Grade 5

5年生になると、プレゼン資料の作成はGoogle slideを使用するようになります。デザインを考えて、見やすくて分かりやすい資料をつくるスキルを身に着けていきます。

タイピング練習も続きます。速度は35WPMが目標です。

 

Grade 6

6年生になると、iPadを自宅に持ち帰ることができるようになります。(子供たちのインターでは、以前はGrade 6からMacが支給されていましたが、現在はGrade 7からに変更になっています。iPad→Macという点は、どこのインターもだいたい同じのようなのですが、タイミングは学校によって違いがあるようです。)

語学系の宿題は音声や動画を録音して提出するものが一気に増えます。iPadで先生の発音を聞いて、それをまねして練習して、録音して提出したり、プレゼンを録画して提出したり。これを繰り返しています。また、グループワークが増え、帰宅後もチャットやビデオ通話、メールなどで友達とやりとりすることが増えます。

 

 

以上、「プログラミング」にフォーカスされた日本の教育とは大きく違うことに気づかれるかと思います。

子どもたちの学校の場合、小学生時代に一番時間を割いて取り組むのは、タイピングスキルの習得です我が家も現在、9歳の次女が、ブラインドタッチ習得に向けて練習を繰り返しています。ブラインドタッチができないとSecondaryにあがったときに学習に支障が出るため、かなりきっちりやります。(なお、日本の場合は中高での学習にあたってPCスキルは必須ではないので、小学生の時点でマスターしていなくても無問題だと思いますが、できると色々便利ですよ!)

 

プログラミング教育の必要性

子どもたちが受けているインターの教育を見ていると、日本の公教育とはあまりにもやっていることが違います。このため、「そもそもどうして日本ではプログラミング教育が必須になったんだろう?」と疑問に思いました。

そこで調べてみたところ、文科省のサイトには、プログラミング教育の目的として、以下のような記載がありました。

①「プログラミング的思考」を育むこと
② プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータ等の情報技術によって支えられていることなどに気付くことができるようにするとともに、コンピュータ等を上手に活用して身近な問題を解決したり、よりよい社会を築いたりしようとする態度を育むこと
③ 各教科等の内容を指導する中で実施する場合には、各教科等での学びをより確実なものとすること(文科省「小学校プログラミング教育の手引」より)

 

なるほど、論理的思考能力+コンピューターを使いこなす力をつけるという2つの目的を同時に達成するために、プログラミングを取り入れることにしたのですね。

限られた時間と予算、人員のなかで、学校でなにをどのように教えるのがいいのか。おそらく、偉い人たちが議論をした結果、「やっぱうちの国の場合、プログラミングをやったらいいんじゃね?」ということになったのではないかと。

つまり、プログラミングは、目的達成のためのひとつの「手段」にすぎないわけです。にもかかわらず、「プログラミング必修」がアナウンスされたとたん、多くの親にとって「プログラミング」自体が目的になってしまったような感じがしています。

 

プログラミング以外の方法でも、論理的思考力を高めたり、コンピュータを使いこなす力をつけることは可能だと思います。プログラミングはお子さんによって合う/合わないもあります。自宅学習では、プログラミングに固執することなく、むしろそれ以外の方法を使って、お子さんにあった方法でゴールまでの途を作ってあげた方がよいのではと思います。

 

我が家の場合

たとえばですが、うちの長女のようにクラフトが好きなタイプには、プログラミングよりもCADの方が面白いようです。

彼女は課外活動でデザインをやっているので、CADを使うことができます。使っているのは、fusion 360という高精度のCADか、その簡易バージョンであるThinkerCADです。PCが使えるときはfusion、ipadのときはThinkerCADと、使いわけているようです。fusionは英語のチュートリアル動画が充実しているので、英語が分かるお子さんにはもってこいです。

次女の方も、プログラミングに全く興味がなかったのですが・・・最近久しぶりにHour of Codeで遊ばせてみたところ、「あれ、面白いじゃん」「こんなに楽しかったっけ?」と言っていました。おっ、波が来た!というわけで、今はちょこちょこ自宅でHour of Codeをやっています。同じ子どもでも、成長に伴い関心が変わることがあるようです。

他に次女が最近はまっているのはiMovieでの動画作成です。結構面白い動画を色々作っています。家族の顔が映っているものが大半なので、公開できないのが残念。。。

 

 

以上、インターのプログラミング教育の実情や、我が家でやっていることなどを紹介してみました。

プログラミング教育を導入すること自体はいいことだと私は思います。でも、「プログラミング、プログラミング」と、そんなに必死にならなくてもいいんじゃないかな、と思います。どうしてもという方は、まずはHour of Codeを自宅でやってみるといいのかなと思います。わざわざお金を払って教室に通わせなくても、基礎的なことはオンラインでちゃちゃっと学ぶことができますよ。

 

以下は1年以上前に書いた記事。今は我が家は完全にこの方向に落ち着いています。論理的思考は語学学習で、クリエイティビティやアーティスティックな感性はICTで、それぞれ伸ばすことを意識しています。

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