アメリカの大学入試からSATエッセイが消える日

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https://princetonreview.blog/2018/03/18/it-is-time-to-eliminate-the-sat-and-act-optional-essays/

 

アメリカの大学入学のために受験することが必要なテストとして、SAT(Scholastic Assessment Test)という試験があります。英語と算数のテストなのですが、オプションでエッセイを受験することも可能です。このオプションのエッセイ、不要とする大学が増え、今ではわずか2%程度の大学しか要求していないとのこと。UC系やハーバードなどがその2%のなかに入っているのですが、ついにハーバードが方針転換し、2019年の入試から「SATのエッセイ不要」とすることを決定したとのことで、話題になっているようです。

参考記事:Harvard Drops SAT Essay(Insiderhigher)

 

SATのエッセイは、文章を読ませてその分析結果を50分でまとめるというものです。そして採点は2人体制で行われ、採点結果が乖離していれば再度3人目の採点者によって評価が行われるそうです。大学に応募するときには自身の特性や志望動機をアピールするためのエッセイを提出しますが、このエッセイは第三者の手が入ったものが提出されることが多く、本人のWriting能力を見る材料としては信頼性に欠ける部分があると言われています。このため、試験形式のエッセイが導入されたようです。

ところが実際にどうだったかというと・・・SATエッセイで高得点をとって入学した生徒の成績が芳しくない。以下はPrinceton Reviewに掲載されていた統計で、SATの結果と、「FGPA(大学1年次の成績)」、「ECGPA(英作文の成績)」の相関関係を調べたものです。SAT-ES(SATエッセイ)の欄だけ、相関指数ががくんと落ちているのがよくわかります。要するにSATエッセイは、志願者の能力を測るテストとしては、機能していなかったということになります。 しかも英作文の成績との相関関係が0.18とか、これってネタ?みたいな結果になっています。(※ざっとしか見ていないので、見落としや解釈の間違いなどがあるかもしれません。何かお気づきの点がありましたらご指摘ください。)

なぜこのような結果になっているかという点については諸説あるようですが、どうもSATエッセイは高得点を出すための書き方のコツがあるようで、その対策をしっかりしたかどうかが結果を左右するという点が、影響を与えているようです。エッセイ試験は採点者の主観に左右されないように採点基準を決めておく必要がありますが、そうするとどうしても「傾向と対策」という話になってきてしまうのでしょうね。英数の場合、問題の形式から、対策をして点数を伸ばすのには限度がありますが、エッセイはきっちり対策すれば確実に点数を伸ばせるという点で違いがあるようです。

 

さて日本では、2020年の大学入試改革により、小論文を課す大学が増えると言われています。アメリカとは逆の方向性ですね。

詰め込み教育の成果ではなく、受験者の思考力をきちんと見ようという2020年大学入試改革の考え方は、間違っていないと思います。ただ、最近日本の大学で出されている小論文の問題をみると、「こんな問題で受験生の知的能力が図れるの?」と疑問を感じずにはいられないようなものも多くて、なんだかなあという感じです。練られた問題が出され、採点体制がしっかりしているSATでも上記のような状況なのに・・・日本、大丈夫かな。

すべてアメリカに右に倣えをする必要はないですが、教育先進国のアメリカでどういう問題が起きているのかを知った上で、日本の大学入試の在り方について考えてほしいな~と思います。

 

本当に大丈夫?2020年大学入試改革

 

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