今年の年末年始、我が家の旅行先はイタリアでした。北から南まで、2週間かけて、車でぐるっと一周。ミラノやフィレンツェ、ヴェネチアなどの都市には立ち寄らず、のんびり農村地帯や地方都市に滞在し、宿泊先もホテルではなくアグリツーリズモにしました。
イタリアの本当のすばらしさは、都会よりも地方にある気がしています。アグリツーリズモ滞在は、ローハス志向の高まりとともに最近日本でも徐々に注目を集め始めているようですが、まだまだ知名度が低いと思いますので、今回はアグリツーリズモについて紹介してみようと思います。
「アグリツーリズモ」とは
アグリツーリズモは、Agri-=農業の、turismo=観光の2つの言葉からできた造語で、第一次産業(農業や畜産業)に従事する事業者が経営している宿泊施設のことをいいます。
色々なタイプのものがありますが、ワインやオリーブオイルなどの生産者が経営していることが多く、希望すれば敷地内や施設を見学させてくれたり、テイスティングをさせてくれたりします。
生産者が経営していることから、食事を売りにしているアグリツーリズモも多いです。地元の食材を使ったおいしい料理に舌鼓を打ちながら、目の前のワイナリーでとれたワインを飲む。最高の贅沢だと思います。
子連れ旅行におすすめの理由
都心の喧騒から離れ、ゆったりとした豊かな時間を堪能できるアグリツーリズモ。上記トップ写真はボローニャそばのアグリツーリズモですが、こんな感じで「ブドウ畑を見張らせるプール付き」の施設が非常に多く、夏場はプールサイドで1日ダラダラすごすことが可能です。冬は残念ながらプールは無理ですが、敷地内をのんびり散策したり、動物と遊んだりと、それなりに楽しめます。
「旅育」の観点からは、生産者の方と直接お話をして、製品へのこだわりや伝統などをお伺いすることができる点がすごくいいと思います。熱心に説明してくれる方が本当に多いです。子供たちもテイスティングという楽しみがあるので(笑)、結構よく食いつきます。(余談ですが、英語ができるとこういう場面で本当に便利。子供たちは「イタリングリッシュ」に慣れているので、私たちよりも聞き取りが出来ている予感・・・)
イタリアでは食文化がそのままその土地の歴史を反映しているので、歴史を意識しながら生産者の方たちの話を聞くと非常に面白いです。たとえばよく一緒にされるボローニャとモデナ。同じエミリア・ロマーニャ州に属し、距離にして30キロも離れていない2つの街ですが、長くローマ帝国の支配下にあったボローニャと、北方から来た民族の支配下にあったモデナでは、文化も伝統料理も作られているワインも全く違い、今でも互いにライバル意識を持っているのだとか。こんな感じで、世界史の教科書には載っていない面白い話をたくさん聞くことができ、地元の人と交流できるのも、アグリツーリズモならではの魅力です。
それから、アグリツーリズモ滞在で子供たちが一番楽しみにしているのは、動物とのふれあいです。アレルギーの関係で自宅でペットは飼えないので、とても貴重な機会です。我が家では検索のときに、できるかぎり「educational farm」がついているところを選ぶようにしています。
アグリツーリズモ エリアによる違い
イタリア各地に散らばるアグリツーリズモ。特に多いのはトスカーナ地方ですが、それ以外の地域にも、北から南まで、あちこちにアグリツーリズモはあります。
トスカーナ
小~中規模のワイナリーに併設された料理自慢のアグリツーリズモが多いです。日本からのアクセスがいいのはフィレンツエ近郊ですが、今回の旅行では少し離れたオルチャ渓谷内に宿泊しました。
下記はそのアグリツーリズモで食べた料理の一部。イノシシ肉のラグー、ルッコラとアーモンドソースのニョッキ、地元野菜のカネロニ、トリュフののったフィレ肉ステーキ、大麦のトマトリゾットなどなど。値段も非常にリーズナブルで、フルコースの夕食付のハーフボードの宿泊プランが大人一人60ユーロと非常にお手軽な値段でした。
トスカーナエリアは、乗馬ができるアグリツーリズモが多いのも特徴のひとつです。他のエリアにもありますが、数がぐっと少なくなります。
イタリア中部(トスカーナ以外)
トスカーナ以外の州にもあちこちにアグリツーリズモがあります。
こちらは我が家が1年ほど前に滞在したモデナのアグリツーリズモの風景。モデナと言えば、バルサミコ。こちらのアグリツーリズモでも代々バルサミコ酢を製造していて、製造過程をじっくり見学させてもらいました。ワインは子どもは試飲できませんが、バルサミコ酢ならOK。しかも伝統的な製法で作られたバルサミコ酢は工場生産のものと異なりコクがあって非常に美味です。このアグリツーリズモは子どもたちにも好評でした。
イタリア南部(プーリア州など)
一方、イタリア南部にいくと、Masseriaといって、農園内のお屋敷を改造した豪華なタイプのアグリツーリズモが増えます。昔はオリーブオイルは灯火用に生産され、「黄金の液体」と呼ばれていたのだとか。そのため富裕層が広大なオリーブ園を所有していたそうで、その古いお屋敷をリノベしてアグリツーリズモとして活用している例が多いです。
下記はプーリア州のとあるアグリツーリズモのオリーブ園。樹齢2000年を超えるオリーブの木が8m間隔に植えられていています。2000年前というと、日本は弥生時代です。そんな昔に植樹されたオリーブの木々が残っていて、未だにそのオリーブからオイルが作られているのです。ちなみにこのアグリツーリズモ、地下に紀元前のオリーブ製造所も残っています。日本だと天然記念物や文化記念物になるようなものが民間施設の中にさらっとあってびっくりです。イタリアの歴史の重厚さを感じさせるアグリツーリズモです。
イタリア北部
北部でアグリツーリズモが多いのは、ドロミテ周辺のエリア。ワイナリーや畜産農家が経営するタイプのものが多いです。このあたりは、国としてはイタリアですが、一部のエリアは公用語がドイツ語となっています。食事は中~南部に比べるといまいち、アグリツーリズモも食事なしのB&Bタイプのものが多いです。ただ、中~南部に比べると周囲の手つかずの自然環境が素晴らしいので、トレッキングやスキーが好きな人にはたまらないと思います。
下記は以前宿泊したドロミテエリアのアグリツーリズモ。動物がたくさんいて、周囲の自然がとびきり美しく、子供たちは滞在を存分に楽しんでいました。
アグリツーリズモの効率的な探し方
アグリツーリズモの情報サイトとして一番大きいのはAgriturismo.itというもの。イタリア人の場合、ここでお好みのアグリツーリズモを見つけてコンタクトをとって・・・とやるらしいのですが、外国人には使いにくいです。というのも、英語でメールを書いても、なかなか返信が来ないから。半分以上の確率で無視されます。そして返信がきても、イタリア語で「残念ながら予約がいっぱいです」なんて書いてあったり。もともと外国人をターゲット層としていないところが多いので、仕方がないのでしょうね。
というわけで我が家は、Booking.comを利用しています。検索のときに「ファームステイ」を選べば、予約できるアグリツーリズモが出てきます。Hotel.comは取り扱いが少ないし、Airbnbもいまいち。アグリツーリズモ探しに関しては、Booking.comが一番適している感じがします。
なお、アグリツーリズモは場所的に空港から離れたところにあるので、レンタカーを借りるか、別途送迎を手配する必要があります。イタリア人の運転は概ね雑ですが、都心部に入り込まなければ特に危険は感じませんので、運転される方はレンタカー利用がおすすめです。
以上、アグリツーリズモのご紹介でした。フィレンツエとかベネチアなどの都会ももちろん素敵だし私は大好きなのですが、子供たちはアグリツーリズモの方が好きですね。例年我が家は夏にクルーズを入れていますが、今年はアグリツーリズモ巡りにしようかなと考え中です。