幸せの多様性

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サイボウズの青野社長が、夫婦別姓が選択できないのは違憲であるとして、国を提訴する方向であることが報道されました。このニュースに対して、選択的夫婦別姓制度は「家族の一体感が失われる」「家族制度が崩壊する」「伝統が失われる」などの批判的なコメントが相次いでいるとのことです。

個人的には、結婚により姓を変更して今でも不便な思いをしているので、選択的夫婦別姓制度はぜひとも導入してほしいと思っています。あくまで「選択制」ですから、夫婦同姓により「家族の一体感」を保持したい(or保持する必要がある)と考えるご家庭は、従前どおり夫婦同姓を継続すればよいのです。「夫婦は同じ姓の方がよい」という価値観自体を否定するわけではありませんが、それを他人にも押し付け、強制するのは勘弁してほしいです。

なぜ日本人にこういう凝り固まった考えの人が多いのかと考えると、「大黒柱のお父さん、それを支えるお母さん、1~2人の子供たち、郊外にマイホーム、家族みんな仲良し」みたいな「理想の家族像」が、ステレオタイプとして定着しているからなのではと思います。そういう「理想の家族像」と相反する概念は、心理的に受け入れがたいのでしょう。

でも、家族の在り方って本当に様々で、ステレオタイプから外れているけど幸せなご家庭だってあるし、逆もしかりなんですよね。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、子どもたちの通っているインターには、実に様々な家庭のお子さんがいますので、今日はそのことについて書いてみようと思います。

その1:私、養子なんだ。

子どもが養子だというパターン、多いです。親御さんと子どもの人種が違うケースなど、見た目ですぐに養子と分かるケースもあれば、「私ね、adoptされたんだよね」と子ども同士の会話から知るケースもあります。

次女のクラスに、学校行事にいつも積極的に参加してクラスをサポートしてくれているお母さんがいます。ちょっと親ばかだけど愛情深くて素敵なお母さんだなと思っていたら、実は養親だと知り、びっくりしました。血の繋がりっていうのは親子関係に必須のものではなく、構成要素のひとつにすぎないんだなと改めて感じました。

日本では養子であることを子どもが大きくなるまで秘密にしていることが多いと思いますが、子供たちの周囲をみていると、結構オープンにしているご家庭が多い印象です(もちろん秘密にしているご家庭もあるのだろうと思いますが、どのくらいいるのかは、私にはよくわかりません)。中には定期的に実親との面会交流をしているご家族もあったりします。

養子を迎えた周囲の親御さんを見ていると、子供を育てることを一つの使命と捉え、真剣に子どもに向き合っている方が多いです。そんな他のお母さんたちの姿勢から、私も学ぶことが多いです。

その2:私、Stepmotherなんです。

パパとママが離婚して、その後パパが再婚して、今のママは継母だというパターン。だいたい初対面のときに、ママの方から、「●●のstepmotherです。」とおっしゃってこられることが多いです。ちなみに日本語で「継母」というと何となくマイナスのイメージがありますが、stepmotherにはそのようなニュアンスはないようです。

また、日本では、離婚をすると子どもの親権は母親がとるケースが多いと思いますが、こちらではどちらもあるようです。インターに来る子たちの場合、父親の収入がそれなりにあるケースが多いので、父親が子どもを引き取り、再婚したり、ナニーの助けを得たりして、子育てをしているご家庭も多いです。

その3:今度のナニー、ちょっと怖いんだよね。

住むこみのナニーがいるというご家庭も、結構あります。20~30代の人を雇っている場合もあれば、50代以上のベテランの方の場合もあります。家族の一員として食事なども一緒にしているケースもあれば、プライベートな時間は完全に別行動というご家庭もあるようです。我が家が住むのは非英語圏なので、アメリカ人やイギリス人のなかには、わざわざ母国からナニーを連れてきている方も結構います。

ナニーに育てられたお子さんの場合、全体的に、大人に対しても物怖じしない、ちょっと自己主張が強いタイプの子が多いように思います。養親や継母と違ってナニーは雇われの身なので、どうしても甘くなっちゃうのかもしれません。

その4:一家の大黒柱は、ママ。

日本だとパパが一家の大黒柱というケースがほとんどと思いますが、こちらだとママが大黒柱というケースが散見されます。忙しいママのかわりに、パパがお迎えに来たり、学校行事に参加したりしているケースもあります。

あと、共働きだけど、学校行事に来るのは大抵パパというおうちもあります。パパは、医師、教授、トレーダーなど、時間に自由が利く職業のことが多いです。

その5:Hi! I am one of K’s dads!

次女のクラスメイト、Kくんのパパが自己紹介のときに言っていたセリフです。
Kくんのご両親はKくんが生まれたあと離婚し、パパがKくんを引き取りました。その後パパは別の男性と結婚。だからKくんは2人のパパと一緒に暮らしています。パパが2人いると混乱が起きることもあるのでしょう、最初から、「父のうちの1人です。よろしく!」とおっしゃっています。
Kくん本人から2人のパパについて色々聞いていること、そしてKくんのパパが素敵な人であることから、次女は同性婚についても何ら偏見なくひとつの家族の形として自然に受け入れています。「Kくんはパパが二人もいて楽しそう」「私も結婚するなら女の子の方がいいかも」なんて言ってます。

その6:パパとママの国籍や母語が違う

ヨーロッパは高学歴・高所得層ほど、国際結婚の割合が多いような気がします。ひとつひとつの国がさほど大きくなく、かつ、高学歴になると複数言語を話す人が多いことから、こうなるのでしょう。

あと、これもヨーロッパならではだと思いますが、パパとママの国籍は一緒だけど、母語は違うというケースも結構多いです。たとえば同じスペイン人夫婦でも、マドリード出身のパパとバルセロナ出身のママだと母語が違います。スイスもドイツ語圏とフランス語圏、ちょっとマイナーですがイタリア語圏などがありますので、夫婦で母語が違ったりします。ちなみにインドや中国も、エリアによって言語が違うので、親の出身地が違うと母語が違ってきます。

このため、うちの子どもたちの友人には、双方の親の母国語+英語(+ドイツ語)と、日常会話レベルなら3~4か国語でOKという子が結構います。このため、長女は「私は2か国語しか話せない・・・」などと言っており、語学が得意という意識が全くないのが面白いです。

その7:パパとママの名字が違う

これも普通にあちこちにいます。ヨーロッパ各国はたいてい別姓選択可能ですし、実は中国も夫婦別姓なんですよね。中国人のお友達のおうちに遊びに行くと、表札にパパとママの名字が並んで書いてあります。

長女によると「国によっては子どもにパパとママの両方の名字をつけるところもある。そうすると名前がすごく長くなるので、ちゃんと名前を書かないといけないときに面倒みたいだよ。でもそれ以外に問題があるって話は聞いたことがない。パパとママの名字が違うのは普通のことだと思うし、なんで反対する人がいるのかよくわからないね」とのこと。

 

以上、日本と比べるとかなり家族の在り方は多種多様だなと感じます。子どもたちも、家族のカタチの「正解」はひとつじゃないということをわかっているようです。それと同時に、「お金をたくさん持っていたら幸せとは限らない」ということも、よくわかっています。

最近あちこちで、「多様性」の大切さが強調されていますが、民族とか文化とかそういうことだけではなく、家族の在り方の多様性についても、もっと寛容になれたらいいのになと思います。

 

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