インター教育と「小4の壁」

最近よく目にする「小4の壁」という言葉。「10歳の壁」という言い方もします。

もともとこの言葉は、思春期前の年代の子供に生じうる様々な問題(例えば、友達と群れて行動したり、友達と比べて劣等感を持つようになったり、親とのコミュニケーションが難しくなったりすること)を指すものだったようです。しかしながら最近は、子どもが高学年向けの勉強についていけなくなった状態を指すことが多いようです。

 

インターにおける「小4の壁」

我が家も、最近、後者の意味での「小4の壁」に近いものを感じるようになりました。というのも、長女がGrade 4になってから、インターでの学習内容がぐっと難しくなってきたのです。Grade 3までは、遊びの延長のような授業が多かったのですが、Grade 4になってから一気に難易度があがり、「勉強色」が強くなってきたのを感じます。そして、基礎学力の違いによって、できる子とそうでない子のアチーブメントにどんどん差がついてきているのも感じます。また、インターの場合、我が家のように、親の海外駐在によって複数の教育システムを行ったり来たりしている子も多いわけですが、年齢があがるにつれ、スムースな移行が難しくなってきているのも感じます。

 

学習内容の難化

国際バカロレアの初等教育は、Units of Inquiryという総合科目で、ひとつのテーマを深く掘り下げて1~2か月かけて「探究」するところに特徴があります。このため、対象テーマに限って言えば、日本の公教育に比べ、かなり深い内容まで学んでいると思います。この深堀度が年々増してきていて、最近は、「あれ、Grade 4でこんなことまで学ぶんだ」などと驚くことが増えてきました。例えば経済がテーマになればミニMBAのようなことをやっていますし、人体がテーマになれば身体の構造のみならず成人病など医学的なことも学んだりしています。

そして学習内容の高度化に伴い、私が見たこともないような語彙がどんどん出てくるようになりました。長女のノートをみると、私の知らない英単語がずらずらと並んでいます。長女の場合、こういった語彙もきちんと頭に入っているようですが、問題はこれらに対応する日本語での呼称を知らないことです。たとえば、diabetesは知っていても糖尿病は知らないし、duodenumは知っていても十二指腸は知らない・・・といった具合です。

違う教育システムへ移行することの難しさ

小学生のうちに鍛えておきたい「読み書きそろばん」の力。インターの場合、「読み書き」は英語ですので、必然的に日本語が弱くなります。そして算数は日本に比べてかなりゆるいです。(ただしこれはエリアに起因する部分が大きいかも。東南アジアのインターなどはおそらく日本の公教育よりレベルが高いのではと思います)理科や社会も、学んでいる内容や学び方がかなり違います。

インターではいつの間にか優等生のポジションを獲得していた長女ですが、日本に帰ったらさぞや苦労するのではないかと心配です。実際問題、小学校高学年以上での帰国の場合、インターでは生き生きとしていたのに、日本に帰国してから公立校の授業で苦労して・・・という話は、しばしば聞きます。

一方、日本の学校→インターで苦労するのは、語学とPCスキル。インターの場合、Grade 5以上になると、PCに関する基礎知識+ブラインドタッチは必須です。語学力については事前にそれなりに準備をされている方が多いようですが、やっぱりプレゼンなどになると厳しいようです。またPCについてはノーケアで、インターに入学してから慌てている方が結構多いように思います。

インター生の「小4の壁」 我が家の対策

日本の公教育のカリキュラムと、IBインターのカリキュラム。日本語での学習と、英語での学習。全てで高いレベルを目指すのは、不可能とまでは言わないものの、非常に困難です。

効率の良さを考えるのであれば、教育カリキュラム・学習言語を一貫させるべきなのでしょうが、我が家の場合は状況的にそうもいかないので、日本に本帰国した場合のソフトランディングを主目的として、家庭で適宜フォローアップをするようにしています。

日本のカリキュラムのもとで高い成果を出すことは子どもには求めていません。ただ、インターで学んだことについて、少なくとも日本語でも理解し説明できるようにした方がいいだろうと思うので、日本語の語彙を適宜補完するよう、心掛けています。具体的には、Units of Inquiryのテーマにあわせて日本語の図鑑や関連図書を購入したり、日本の教科書や参考書の該当箇所を音読させたり、関連する語彙の漢字の練習をさせたりしています。とはいえ、所詮は付け焼刃ですので、なかなか記憶が定着しないのが難しいところですね。

インターに通わせつつ放課後はバリバリ学習塾に通わせている日本人家庭もあるようであり、そういう話を聞くと若干焦りも感じますが、我が家の場合、優先したいのは難関中学に合格することではなく、基礎的な学力を育みつつ子どもの個性を伸ばしていくことなので、焦らずマイペースに、「小4の壁」を乗り越えていけたらと思っています。

「小4の壁」と海外留学

おそらく9歳くらいまでの年齢であれば、異なる教育カリキュラムへの移行も、学習言語の変更も、大した問題にはならないのではと思います。なにも準備せず新環境にポイと掘り込んでも、なんとかなります。ところが10歳を超えるころになると、教育カリキュラムの移行や学習言語の変更は、子どもに大きな負担になります。親が主導してソフトランディング戦略を予め練っておくことが肝要と思います。

最近は、海外赴任への帯同のほか、親子留学等の形で海外の学校にお子さんを通わせる方も増えているようですが、留学を考える際には、このような「10歳の壁」についても、十分に意識して、タイミングを決められた方がいいのではと思います。

なお、インターの場合、学年があがるにつれ、エキサイティングな授業が増えてくることも事実です。地頭がよく、ある程度の語学力があるお子さんなら、10歳を超えてからの方が、得るものは大きいのかもしれません。そういう意味では、10歳を超えてからの海外留学やインター入学も、十分検討に値する選択肢だと思います。

「インター教育と「小4の壁」」への2件のフィードバック

  1. Clematisさん、ご無沙汰しております。大変興味深く記事を拝読しました。深く掘り下げて学習していく形・・・。とても魅力的ではありながら、これを両言語と考えると、なかなか難しいことだなぁと感じました。日本の学校に通う娘は、完全に日本語ベースですが、これらを英語で補完するとなると、なかなか今のスケジュールでは難しいと早速小学生の壁を感じています。

    私の中国人の友人は、8歳で日本に帰化しながら、両言語同様に使える高度なバイリンガル(実際はトライリンガル)なのですが、やはり日本にいながら中国の教科書をお母様が取り寄せてくださり、毎日両言語同じように接する努力をしたようです。「あの頃、無理させてくれて良かった。」というのが彼女の口癖(笑)。2言語の中で生きるって、難しいですね。

  2. Yuzyママさん、

    こんにちは!コメントありがとうございます。
    そうなんです、ここにきて、日本語で同じ内容を学習させることができなくなってきてしまって、焦っています・・・汗 

    周囲をみると、Yuzyママさんのお友達のように、ご自分がバイリンガルのママは、子どもの二か国語教育に非常に熱心ですね。同じように、「自分が子どものころ、日本語の勉強や日本語補習校への通学が面倒でいやだったけど、今は親にすごく感謝している」とおっしゃいます。私も将来子どもに感謝してもらえるよう、今は嫌がられても、頑張ろうと思います(笑)

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