今日は久々におすすめの絵本を紹介しようと思います。
Grandfather’s Journey。日系アメリカ人作家の絵本としてもっとも有名な一冊といえば、おそらくこれなのではないかと思います。
著者のAllen Sayさんは、本名がJames Allen Koichi Moriwaki Seiiといいます。Seii(清井?)がアルファベット表記だと恰好が悪いため、ペンネームはSayにしているようです。
上記Grandfather’s Journeyは、Sayさんの祖父のお話です。青年時代に日本からアメリカにわたるも、戦争勃発により日本に戻ることになった祖父は、アメリカにいたときは日本を懐かしみ、日本に戻ってからはアメリカを懐かしんでいたそうです。二つの「祖国」の間で揺れる一人の人間の心を鮮やかに描いたこの絵本は、1994年にコールデコット賞という非常に権威ある賞をとっています。
移民社会のアメリカ。Amazon.comやGood Readsのコメントを読むと、この本がいかにたくさんのアメリカ人の共感と感動を呼んでいるかがよくわかります。多くの人がこの物語を「日系人の物語」としてではなく、「自分の物語」として受け取ったようです。ちなみにSayさん自身も生まれてから16歳になるまでの間を日本で過ごし、その後日米を往復する人生を送っています。祖父の物語という形で語られるこの物語は、実はSayさん自身の物語でもあるのです。
Sayさんの絵本の特徴は、やわらかい色調の美しい水彩画と、淡々とした「静かな」文体です。お年寄りを描かせたらこの方の右に出る人はいないのではと思います。そして描かれている日本の田舎の風景も澄み切った美しさが素晴らしいです。
難解な単語はなく分量も少ないので、小さいお子さんでも読めそうですが、テーマが深いので小学校中学年以上向けでしょうか。ちなみにこの絵本、アメリカの小学校の授業のなかでもよく使われているそうです。
Sayさんは他にも日本をテーマにした絵本をいくつか出しています。
Kamishibai Manは、テレビの普及とともに紙芝居やさんをやめた男性が、やがて年をとり、再び紙芝居をもって懐かしい街に戻るというお話です。こちらもシンプルな文体ながらジワッとくるものがあります。図書室で読んで思わず泣きそうになり途中で本を閉じた私です。かなり危険です(笑)
ほかにも、私はまだ読んだことはないのですが、Misic for Alice、The Bicycle Manなどが有名です。
以上、Grandfather’s Journeyの紹介でした。