我が家は欧州のドイツ語圏に住んでいます。
こちらに来てびっくりしたことがいくつかありますが、そのひとつは、どこに行っても英語がそれなりに通じること。
子どもの学校の関係者やパパ&ママたちは勿論のこと、レストランの店員さん、スーパーのお肉売り場のおじさん、ご近所のおじちゃん&おばちゃん・・・大抵の場合、英語で問題なしです。たまに通じないこともありますが、その場に居合わせた人が通訳してくれたりして、何とかなることが多いです。これ、日本では考えられないことですよね。
さて、欧州全体ではどのくらいの人が英語を話すことができるのでしょう。
英語話者の割合を地図で表すとこんな感じになるようです。(※下記は国別の英語話者の割合を示したものですが、実際にはどこの国でも、都心や観光地は通じやすく、田舎に行くほど通じなくなります。)

Knowledge_of_German_EU_map.svg: AlphathonTM (talk) Wikipedia Commons
ほぼ問題なく通じるのは、オランダ、デンマーク、北欧。いつでもどこでも、英語で問題なしです。ドイツやスイスは、知識層の人たちや都心のレストランの店員さんなどはきれいな英語を話しますが、地方に行くと全く通じなかったりします。イタリアやスペインは他国に比べるとやや英語が通じにくい(+話せても訛りが強い)気がします。イタリングリッシュなんて言葉もあったりします。といっても、日本に比べれば流暢に話す人は各段に多いです。
そして注目すべきは、最近のフランスです。以前は、「フランス人は英語が嫌いだから、英語で話しかけても答えてくれない」などと言われていました。ところが、長女の友人Nちゃんのママ(フランス人)いわく、ここ10年くらいで大きく流れが変わったとのこと。学校が英語教育を重視するようになったことや、英語での娯楽を楽しむ人が増えたことから、若い世代を中心に、英語が堪能な人が急増しているとのこと。「パリとか都会で暮らしていく分には、英語だけで大抵のことは事足りるんじゃないかしら。」と言っていました。
それでは、なぜ欧州では非英語圏の人たちも英語を流暢に話すことができるのでしょう。
(1)言語系統が英語に近い
一番大きな理由はこれですね。
例えば、英語とドイツ語。発音が似ている単語がかなり多いです。英語のGood morning!は、ドイツ語ではGuten Morgen!です。英語のCatは、ドイツ語ではKatze。文法は色々違いがありますが、日本語と英語の違いからみれば、かわいいものです!
言語系統が近いと、習得にも時間がかかりません。これが大きなアドバンテージになっています。
言語系統の近さを表す数字としては、アメリカ国務省のThe Foreign Service Institute (FSI)という機関が作成したリストが参考になります。詳細は下記の記事を参照いただければと思いますが、英語話者がドイツ語やフランス語を習得するのにかかる時間は約600時間なのに対して、日本語は2200時間となっています。FSIリストはあくまでも英語話者が外国語を取得するのに要する時間を示すものですが、外国人が英語を習得するという逆パターンについても、同じくらいの時間がかかるのではと推測されます。ということは、ドイツ語やフランス語を母語とする人は、日本語を母語とする人の3分の1以下の時間で、英語をマスターできるということになるのではないかと。なんとうらやましい!
余談になりますが、ドイツやオランダ、デンマークなどでは、3~4言語を操ることができる人があちこちにゴロゴロいます。ドイツ人の友人いわく、ラテン語を学ぶと、そこから派生した言語を比較的容易にマスターできるようになるのだとか。

(2)親や先生が英語を流暢に話す
身近に英語を流暢に話せる人が多いのもヨーロッパの特徴です。
例えば、スイス人の友人の場合、本人も旦那さんも母国語はドイツ語ですが、2人とも英語も流暢に話すことができるので、子どもが3歳になったころから、ドイツ語で話しかけたあと、英語で同じことを繰り返す・・・という形で、日常会話のなかで英語のインプットをしてきたそうです。日本の早期英語教育では、日本語と英語のちゃんぽんはいけないということが言われますが、普通にちゃんぽんしています。そしていつの間にか、子どもも英語を理解し、話せるようになっています。
日本の場合、学校で英語を教えている先生すら、「しゃべり」はいまいちだったりしますので、差がつくのは仕方がないのでしょうね。
(3)小学校から英語が必修
ヨーロッパの多くの国では、英語が小学校から必修となっています。だいたい小学校低学年からはじまる国が多いようです。フランスでも今は小学校1年生から英語教育が始まるそうです。
早ければいいというわけではありませんが、低学年のうちからそれなりの時間をかけてネイティブ並みの英語力のある人に習えば、国民全体の英語力が底上げされるのは間違いないのでしょうね。
(4)娯楽を通じて英語を習得
たとえばオランダやスウェーデンなどでは、母国語の娯楽(ドラマ、書籍、音楽)があまり充実していないそうです。このため、ある程度の年代になると、自然に英語の娯楽を楽しむようになるのだそうです。一般には、リスニングから入って、リーディング、スピーキング・・・と上達していく人が多いようです。このため、流暢に話せるけど、書くのは苦手という人が意外に多いです。
日本は、幸か不幸か、日本語の娯楽が充実しているので、若年層が英語の必要性を感じる機会が少ないのでしょうね。
(5)高校生や大学生のときに短期留学している人が多い
若年の知識層の場合、アメリカやイギリスへの留学経験のある人が結構多いです。
日本の場合、「留学?そんなお金、うちにはないわよ」というご家庭が多いと思いますが、ヨーロッパの場合、多くの国で大学の学費は無料または格安なので、留学の経済的なハードルはさほど高くない感じです。また、イギリスへの留学は、EU圏内からの場合には格段に安くなります(イギリスの大学の大半は国立大学で、EU圏外か否かで学費に大きな差があります)。
我が家の住むエリアですと、現地校に通う小学生で英語を流暢に話す子は少ないのですが、中学生になると一気に増えます。そういう子たちが留学を通してさらに英語をブラッシュアップさせているわけで、こりゃ適わないわけだ~という感じです。
以上、ヨーロッパの人が英語が堪能な理由について整理してみました。
フランスの最近の動きなどを聞いていると、英語の世界共通語としての地位は、ますます確固たるものになってきているように感じます。ネイティブレベルとまではいかなくとも、子ども達には、このように外国語として英語を流暢に話すことができる人達と同等レベルの英語力は身に着けさせたいなと思います。