本当に大丈夫?2020年大学入試改革

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少し前になりますが、現代ビジネスに以下のような記事が掲載されていました。

2020年に大学入試改革が実施され、それにより大学入試のあり方が大幅に変わることが予測されるとのことです。

記事のなかでは、その予兆として、昨年1月に順天堂大学医学部の入試で出された問題が紹介されていました。問題をみてびっくり仰天。今後は、このような問題が主流になる可能性があるようです。

その問題とは、以下のようなものでした。

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『キングス・クロス駅の写真です。あなたの感じるところを800字以内で述べなさい』

 

なぜ私がびっくりしたかというと、うちの子ども達が普段学校でやっている課題にそっくりだったからです。

子ども達のインターでは、抽象画や写真をみて、それが何を表しているのか、それから何が感じられるかということの議論を盛んにやっています。詳しくは、以前こちらの記事に少し書きましたので、興味のある方はご覧になってみてくださいね。

抽象画や写真をみてディスカッションをするのは、瞬発的かつ柔軟な思考力を養うにはとてもいいと思います。IB的にいうところのInquiry(探求心)を深めるという面でも、利点があるのだと思います。

 

でもね・・・これ、7~8歳の子ども達がやっていることですよ。このような問題で、17~18歳程度の年齢の子ども達の知的能力が計れるとは私には思えません。中学入試の問題なら分かるんですけど・・・大学入試でこの問題?しかも医学部で?一体どのような能力を計りたいのか?理解不能です。

論述式問題でこのくらいの年代の子どもの知的能力を計るとしたら、たとえば1つの課題について英語と日本語の資料を冊子でぼんっと渡して、それを分析して結果をまとめさせるとか、ホットなトピックスについて複数の論者の論考を読ませて、それを比較検討させるとか、そういう問題にすべきだと思います。


上記順天堂大学の試験問題について気になったので、もう少し調べてみたところ、東洋経済に以下のような記事がありました。

筆者の方いわく、大学側はこの問題を通して「医師としての資質」や「人間力」を問うているのではないかとのこと。よって、そのような出題者の意図を汲んだ回答を書けばいいのであって、なにも恐れることはないとのことでした。

この記事を読んで、なるほどそうなのかもしれないと思いました。でも、もし順天堂大学の教授たちが、本気でこんな問題で「医師としての資質」や「人間性」が計れると思っているなら、ずいぶん甘い考えだなと思います。

大人が思っているよりも子どもはずる賢いです。少し頭が回る子なら、大人受けのする回答を作成するのは容易なことです。要するに、この問題で計ることができるのは、医師としての資質ではなく、小賢しさや要領の良さです。医師としての資質でスクリーニングするなら、面接やグループディスカッションなどを実施すべきです。


以上、出題者の意図がどこにあるのかよくわかりませんが、このような問題が大学入試の主流になるとしたら、大問題だと思います。英語力やALなど、大目標を掲げるのはいいのですが、なんだかトンチンカンな方向に向かっている予感がします。

もうひとつ言わせてもらうと、いまだに試験がペーパーベースというのも、日本の遅れている点です。私が10年前にアメリカの大学院に留学したときには、すでに大学や大学院の定期試験の類は、PC利用が原則になっていました。また、卒業後に受験する国家資格試験は2日間にわたるものでしたが、論述式についてはPCかペーパーかを受験者が選択することができました。いずれも自分のPCに試験用のソフトをインストールして、試験中に使用できる機能を制限し、PCで回答するというもので、手順は極めてシンプルかつ簡明でした。

社会人になって手書きで文章を作成する機会なんて、今は全くありません。にもかかわらず、高等教育の論述式試験でPC使用不可というのは、なんだかなあ・・・と思います。ちなみに、2020年度から実施予定の「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」では、パソコンを使って解答するCBT方式の導入を目指しているそうです。実現すればアメリカから約20年遅れてのICT導入ということになりますが、本当に実施できるかは現時点では不透明な状態のようです。

2020年に予定されているという日本の大学入試改革。これからどのような方向に行ってしまうのか、とても不安です。

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