今日は子どもだけでなく大人にもお薦めの絵本を一冊紹介したいと思います。Shel Silversteinが書いたThe Giving Treeという本です。
少年が小さいころからいつも近くにある大きな木。少年は木登りやかくれんぼで遊び、木の実を食べ、木のことが大好きだ。木もとても幸せだった。
少年が成長すると、もっと大事な人や物ができて木との距離が広がりはじめる。迷ったときや困ったとき、都合のよいときにだけ木を頼ってやってくる身勝手な少年。それなのに木は、たわわに実った実を持っていけ、枝を刈って家を作ればいい、太い幹を切り倒して舟を作ればいいと無償の愛を注ぎ続ける。そんな木の姿から、生きていく上で一番大切なことを教えられる。
日本語では「木」と訳されているが、原書は「her=彼女」と女性名詞になっている。どっしりと揺るぎない、母性的な愛情が感じられる。
(『英語ペラペラキッズ(だけにじゃもったいない)ブックス』 より)
木は、少年に実を与え、枝を与え、最後に幹も与えます。木は切株だけになりますが、それでも、年老いて戻ってきた「少年」を、無償の愛で、優しく受け止めます。
人を愛するって何だろう・・・と考えさせられる一冊です。
この本、長女が学校から宿題として持ち帰ってきたので、一緒に読んだのですが、彼女は、「木がかわいそう」と言っていました。もう少し大きくなってから、また読ませてみようと思っています。そのときには、どんな感想を持つのかな。
この本の著者、Shel Silversteinは、線描きの愛らしいイラストで有名な絵本作家です。女性風の名前ですが、実は男性です。しかも、メルヘンチックなイラストからは想像できないほど、コワモテです。ぶっちゃけ、絵本作家というより、指名手配中の殺人犯といった風貌です。
シンガーソングライターとしても成功しており、彼が提供した曲のなかには、グラミー賞を受賞した曲もあるのだとか。
多方面で活躍した人ではありますが、彼の人生は波乱万丈です。1930年生まれで、1950年代には朝鮮戦争に従軍しています。軍をやめたあとは、プレイボーイ誌に漫画を描いたりしていたそうです。The giving Treeを書いたのは1964年、彼が34歳のときです。1969年には歌詞を書いた”A Boy Named Sue”が大ヒットを記録し(グラミー賞も受賞)、絵本作家としてだけでなく、シンガーソングライターとしても名声を得ます。しかしながら、プライベートでは、1975年に奥さんを亡くし、1982年には長女をわずか11歳の若さで病気で亡くしています。その後も精力的に作品を発表し、プライベートでは再婚もして、1999年に亡くなっています。
彼がどんな人たちにどんな愛を注ぎ、注がれたのか。彼の人生に思いを巡らしながら読んでみると、また違った味わいが感じられるかなと思います。
ちなみにこちらの本、日本語版も出ています。日本語版は3つのバージョンがありますが、うちひとつは、村上春樹さんが訳者となっています。
とてもいい本ですので、機会がありましたら是非手に取って読んでみてくださいね。