数学の得意・不得意って、いつどのようにして決まってくるのでしょうか。自分の周囲をみてみると、本当に数学の才能がある人は小さいころから光るものがあり、先天的な部分がかなりあるような気がしています。そこで、実際のところどうなのか、ちょっと調べてみました。
少し古いですが、日本語の論考ですと、以下の論文が比較的分かりやすくまとまっていました。
糸井尚子「算数・数学能力の生得的・遺伝的な教育と基礎」(2007)
上記糸井論文によると、日本でも欧米でも算数の能力の遺伝について色々な研究がなされているようなのですが、日本の研究は「算数については遺伝の影響は著しく低い」としているものが大半とのこと。逆に欧米の研究では、「遺伝の影響あり」としているものが多いのだそうです。ただし、この分野の日本の研究は欧米に比べると圧倒的に数が少ないそうです。
上記論文の他にも、教師や親などが自分の経験から考えを述べている記事や、研究結果を紹介している記事は膨大にありましたが、きちんとした裏付けがない感覚的な議論や、紹介されている研究の引用元が不明な記事ばかりだったので、ここでの言及は捨象します。
そんなわけで英語でも情報を追いかけてみました。以下、google先生に聞いて出てきた記事を、いくつかご紹介します。
Bad at Math? Blame It on Your Parents | NBC 6 South Florida
アメリカのテレビ局、NBCの記事。UCLAの研究者の研究によれば、数学の計算に使われる脳の部分は、85%、遺伝的要因で決まってくるとのこと。
Same genes drive maths and reading ability | UCL
こちらはオックスフォード大学の研究結果。数学の能力に影響を遺伝子の半分は、言語の能力にも影響を与える(よって数学の能力が高い人は言語能力も高い)という内容になっています。
People May Be Born Good (or Bad) at Math | TIME
TIMEの記事に載っていたジョン・ホプキンス大学の研究者の研究結果。数学の得手不得手は、持って生まれた”number sense”に影響を受ける、すなわち数学の能力は遺伝に影響されるとの結果になっています。
他にもたくさんの記事がありましたが、とりあえずこのくらいで。知能の高さが先天的なものとその後の環境の両者で決まってくることについては争いがないようです。数学が特別なのかという点については、”number sense”に着目して数学特有の遺伝のしやすさがあるとするものと、数学も語学も変わらないとするものと、色々なようです。
ひとくちに数学といっても、純粋に数字にかかわる問題から図形問題、文章題まで色々な種類があり、それぞれによって必要とされる能力は違ってくるので、どのようなtestをするかによって結果が変わってくるのかなという気がします。もうちょっと細かくそれぞれの研究内容を見てみれば面白いことがわかるかもしれませんが、分析する時間も能力も私にはなさそうなので、この辺にしておきます。
結局、数学の能力がある程度遺伝するのは確かなようですが、数学の能力といっても色々なものがあり、どの程度どの能力が遺伝するのかはまだはっきりとはわかってないようです。個人的には、number senseが遺伝で決まるという3つ目の記事の内容は、すごく納得できます。
いずれにせよ、子どもの算数のテストが悪かったら、子どもを責めるのではなく、半分くらいは遺伝子のせいだと思った方がいいのかもしれません(笑)。いつもカリカリしがちな自分への自戒を込めて。