教育に関する雑考

バイリンガル教育のゴールはどこに設定すべきか

少し前のことになりますが、日本語補習校(現地校に通う日本人が土曜日のみ通う学校)にて、子ども達に勉強を教える機会がありました。教えたのは、長女とほぼ同じ年代の小学生15人ほど。8割くらいがハーフのお子さんでした。

印象的だったのは、日本語と現地語、両方について学年相当の語学力があると思えるお子さんがひとりもいなかったことです。基本的には、両親のどちらか又は双方が日本人のお子さんですから、みんな日本語は流暢に話すのです。ただ、母語が現地語のお子さんの場合、日本語の読み書きは苦手で、特に漢字にはとても苦労していました。そりゃそうですよね、1週間に一度、頑張って日本語の勉強をしても、こんなにたくさんの漢字をきっちり覚えるのは難しいです。一方、母語が日本語のお子さんの場合、日本語の読み書きは完璧だけど、現地の言葉は他の子ども達とのコミュニケーションも一苦労といった感じのようでした。

おそらくですが、両親の母語が違う場合、それぞれが意識的に母語で語りかければ、「流暢に日常会話ができるレベル」のバイリンガルに育てることはそれほど難しいことではないのではと思います。ただ、そこから一歩進んで、「学年相当の読み書きがきちんとできるレベル」にまで持って行くのは、相当大変なことなのではと推察されます。両親の母語が違ってもこれだけ難しいんですもの、普通の日本人家庭で、複数言語について学年相当の読み書きができるような能力を子どもに身に着けさせるのは、親にとっても子どもにとっても、本当に大変なことなんだな・・・と改めて実感しました。やり方を間違えれば、両言語とも十分に読み書きができない、いわゆる「セミリンガル」になってしまうというのも、よくわかります。また、ひとくちにバイリンガルといっても、色々なレベルがあるんだな・・・というのも分かりました。

以上を踏まえて、我が家も、子どもにバイリンガル教育をするにあたって、ゴールをどこに設定するのか、すなわち、「第一外国語について、母語同様のレベルを目指すか」、改めてきちんと考えていかなければならないなと思いました。ゴールをどこに設定するかによって、そこにたどり着く方法も違ってきますしね。短期間で頂上を目指すなら、途中でちょっとお高いロープウェーに乗ることも必要かもしれません。一方、中腹までのんびり行くなら、自分の足で歩いた方が、達成感があるし、色々な出会いがありそうです。


ちょっと話がそれますが、ドイツ人の友人が、語学教育について、とても興味深いことを言っていました。ドイツでは、子どもにラテン語を勉強させることが多いそうです。エリートはラテン語くらい分からなきゃならんという雰囲気があることも一因のようですが(ヨーロッパでは長年にわたり、ラテン語=学問のための言語と位置づけられていました)、ラテン語を学ばせるもうひとつの大きな理由は、ラテン語の文法をきっちり学ぶことにより、その後のヨーロッパ系の他言語の習得に非常に役立つ、すなわち、マルチリンガルになりやすい、ということがあるとのことでした。ラテン語は多くのヨーロッパ言語の源になっていますから、ある意味合理的な方法ですね。日本人は「まずは英語」と考えてしまいますが、彼らは多言語マスターを目標に、中長期的な視点に立って言語教育を考えているんだなと感心しました。

日本語はラテン語系統ではないですから、ラテン語を学んでそこから多言語を極めていくというのは、現実的な選択ではないでしょうが、「とにかく母語をしっかり+日常会話程度であれば複数言語を流暢に操れる」という形も、ひとつのバイリンガル教育(ここではマルチリンガル教育というべきでしょうか)のゴールの在り方なのかもしれないな、と思いました。


英語について高等教育に耐えうるレベルの高みを目指すか。それとも、英語はそこそこにしておいて、第二、第三外国語習得を視野に入れた教育をするか。たぶんこれは将来の子供の進路とも関係してくるんじゃないかなと思います。高校や大学から米国などの海外に出すなら必然的に前者になるんでしょうね。でも、とりあえず大学までは日本で、ということなら、後者の方が面白いかもしれません。もっとも、そこまで語学に時間を費やすくらいなら、他の勉強をした方がいいんじゃ・・・という気もします(笑) ちなみに大学院からの留学の場合、ネイティブレベルの英語力は必須ではないです。むしろ重視されるのは専門性かと。

うちの場合は、まだまだ英語も十分ではないので、まずは英語力強化を目指すしかないわけですが、ゴールをどこに設定するのかということも、子どもと話しながら、ゆっくり決めていければと思っています。

バイリンガル教育のゴールはどこに設定すべきか” に5件のコメントがあります

  1. こんにちは。私のシンガポールの友人で、両親が日本人にも関わらず、完全に英語ベースのナショナルスクールで育てようとしている方が何人かいます。その方々はまずご家庭及びお仕事が既に日本に拠点を持たなくてもやっていける突出した状態になっていることと、英語というよりどこの大学を卒業させるかを視野にしてました。具体的にはアメリカのトップ大学を卒業させることを前提にしてます。こちらに来た時に、子供の性格を考えてどこがとけ込みやすくて、英語を覚えられるかなぁとか考えてましたが、卒業させる大学を視野にPrimaryから学校選択をしている人たちがいて、すごいなぁ(お金的にも目処が立っている点も含めて)と思ったのでした。

    1. こんにちは!
      アメリカの大学に通わせてあげられる家庭環境と財力、うらやましい!シンガポールだったらシンガポール国立大学とかもあると思うのですが、その方々の場合、それより上を目指しているんですね。我が家はやっぱりアメリカは厳しいですね~>< 
      ちなみにそういうご家庭の場合、日本語はどうされているんでしょう?もはや日本語学習は不要ですよね。でも「日本人」にもかかわらず日本語がいまいちということになると、本人のアイデンティティーはどうなるのかなとちょっと思いました。まあでもたぶん、そういうご家庭なら、日本語もしっかりやっていらっしゃるんだろうなー。

  2. 日本語ですが、そういうご家庭の場合、両親が日本人でも2パターンに分かれてます。英語を第1にして、日本語はある程度できればいいという方。漢字とか日本語は学年相当になっていないようですが、もうご家庭がご子息をグローバルの世界で育てるとハッキリ方針が決まっているようです。ですので、日本語をどう育てるかはそこまで重視されていない様子。グローバルのトップを目指すのにどういう教育が良いかの思考パターンですね。別パターンはこっちで塾とか、長期休み毎に日本に帰ったりしてますね。学年相当以上の日本語力があるらしいです。シンガポールは日本語での教育施設が充実してます。おそらく、日本国外で一番かなと思います。お金があれば、家庭ではなくそういう専門の人たちに「外注」しまくれますよ(笑)。
    すごく良い方々で当初アドバイスを色々もらいましたが、金銭的に私には全部やるのは無理だなとすぐ理解できましたね。
    シンガポールでお金が湯水のようにあれば、ヘルパーさん、日本語塾など含めサポート体制はつけやすい国かもしれません。

  3. ちなみに日本に帰国することを伝えた時、日本でインターナショナルスクールに入れないのか?と聞かれましたね。私の場合、義務教育になるかどうかの問題とか、お金とか色々と考えなければならない立場ですが、そういう方々は、どこの国に住んでもその国のトップアメリカンスクールに入れて、そのままアメリカのトップ大学へ行かせればいいという考え方なので、学校選択に悩む必要がないみたいですね!

  4. コメントありがとうございます。
    なるほど~。海外の大学に入れることをすでに方向性として決められているご家庭でも、日本語についての考え方は様々なんですね。
    コストを考えなくていいのは、めちゃくちゃ羨ましいですね~。普通の日本人家庭だと、教育をコスト抜きで考えることは無理ですものね。
    ちなみに私の周囲では、日本帰国後は普通に日本の学校に戻る方が大半です。インターも一部いるようですが、日本の学校の勉強についていくのが大変だとか、カルチャー的にうまく馴染めなかったとか、ちょっと後ろ向きの理由が多いかもしれません。海外インターの素晴らしい設備や先生たちをみていると、やっぱり日本のインターはコスパが悪すぎるように感じられてしまいます。。。

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