教育に関する雑考

インターナショナルスクールと就学義務

最近、日本でも、お子さんをインターナショナルスクールに通わせるご家庭が増えてきました。

「英語が話せるようになる」という点に魅力を感じてインターを選択されるご家庭も多いようですが、実際には、高額な学費、日本語能力の衰え、卒業後の進路など、マイナス面も多々あるように感じています。

それから考えなければならないのは、子どもをインターに通わせるのは、「就学義務違反」になるという点です。今回はこの就学義務について、ちょっと詳しく掘り下げて書いてみたいと思います。

 

就学義務とは

就学義務とは、子どもに小中9年の普通教育を受けさせるという、憲法で定められた「親の義務」のことです。国民の三大義務のひとつです。

すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。(憲法第26条2項)

国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。(教育基本法第5条1項)

ちなみに憲法26条は属地的な規定と解されているため、海外在住の場合には、適用がありません。あくまでも、親子がともに日本に在住している場合の「親の義務」ということになります。よって、海外赴任での現地校・インターへの入学、親子留学、ボーディングスクールへの単身留学などは、いずれも就学義務違反とはなりません。

国内インターに通わせることは就学義務違反になるのか

以下、文科省のHPの説明です。一部日本語がおかしいところがありますが、とりあえずそのまま引用します。

インターナショナルスクールの中には、学教法第1条に規定する学校(以下「一条校」といいます。)として認められたものがありますが、多くは学教法第134条に規定する各種学校として認められているか、又は無認可のものも少なからず存在しているようです。

一方、学教法第17条第1項第2項には、学齢児童生徒の保護者にかかる就学義務について規定されています。そこでは保護者は子を「小学校又は特別支援学校の小学部」「中学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部」に就学させると規定されています。よって、保護者が日本国籍を有する子を一条校として認められていないインターナショナルスクールに就学させたとしても、法律で規定された就学義務を履行したことにはなりません。(文科省HP

整理すると

一条校なら義務違反にならない
一条校でないなら義務違反

ということになります。

ここで一条校とは、学校教育法の第1条に掲げられている教育施設をいい、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・大学・高等専門学校が該当します。

大多数のインターは一条校ではありません。一条校になると国から財政的な支援を受けられるというメリットがありますが、文科省のカリキュラムに沿った教育を行う必要があります。インターのカリキュラムとの両立は困難であり、いわゆる老舗のインターで「小学校」「中学校」として一条校の認定を受けている学校は皆無に近いと思います。

ちなみに有名な一条校のインター小学校としては、幕張インターナショナルスクールがありますが、ここは国際バカロレアの認定を受けていません。国際バカロレアのPYPを採用していて一条校になっているのは、今のところ、岐阜のサニーサイドインターナショナルのみ。ただここは、幼稚園が主体のようで、小学部についてはほとんど情報なし。あとは神奈川の聖ヨゼフ小学校がPYP候補校になったようなので、もし順調に認定がおりれば、ここがPYP×一条校の国内2ケース目ということになりそう。とはいえ、聖ヨゼフの場合、PYPを日本語で教えるようであり、いわゆる「インター」ではありません。

というわけで、国内のインターに通わせつつ、就学義務も果たすというのは、事実上きわめて困難ということになるかと思います。

就学義務が免除されるケースとは

次に学校教育法16条により就学義務が猶予/免除される例外的ケースについて紹介します。

まずは文科省のHPの説明を引用しておきますが、ちょっとわかりにくい部分もあるので、読むのが億劫な方は引用部分は飛ばしちゃってください。

Q 就学義務の猶予又は免除について、猶予・免除の事由、手続はどのようになっていますか。

A 我が国においては、全ての国民は日本国憲法第26条、教育基本法第5条により、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負っており、学校教育法第16条において9年の普通教育を受けさせる義務について、学校教育法第17条において就学義務について規定しています。日本国民に対して、この就学義務が猶予又は免除される場合とは、学校教育法第18条により、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため就学困難と認められる場合とされています。

ここでいう「病弱、発育不完全」については、特別支援学校における教育に耐えることができない程度としており、より具体的には、治療又は生命・健康の維持のため療養に専念することを必要とし、教育を受けることが困難又は不可能な者を対象としているところです。

「その他やむを得ない事由」としては、
児童生徒の失踪、
児童自立支援施設又は少年院に収容されたとき、
帰国児童生徒の日本語の能力が養われるまでの一定期間、適当な機関で日本語の教育を受ける等日本語の能力を養うのに適当と認められる措置が講ぜられている場合、
重国籍者が家庭事情等から客観的に将来外国の国籍を選択する可能性が強いと認められ、かつ、他に教育を受ける機会が確保されていると認められる事由があるとき、
低出生体重児等であって、市町村の教育委員会が、当該児童生徒の教育上及び医学上の見地等の総合的な観点から、小学校及び特別支援学校への就学を猶予又は免除することが適当と判断する場合、
といった事例が考えられます。(文科省HP

重国籍のお子さんの場合には、上記免除理由のうち、「その他やむを得ない事由」の4つめの例(重国籍者が家庭事情等から客観的に将来外国の国籍を選択する可能性が強いと認められ、かつ、他に教育を受ける機会が確保されていると認められる事由があるとき)に該当するのであれば、インターに入れても就学義務違反にはなりません。

また、帰国子女の場合も、「その他やむを得ない事由」の3つめの例に該当する場合(帰国児童生徒の日本語の能力が養われるまでの一定期間、適当な機関で日本語の教育を受ける等日本語の能力を養うのに適当と認められる措置が講ぜられている場合)には、就学義務が猶予されます。ただし、文科省の見解によれば、「日本語の能力が十分ではない子の場合、日本語ができるようになるまでの間はインターにいてもいいよ!」ということなので、無条件に許容されているわけではないようです。

それでは、「家族の仕事の関係で数年内に海外に転居する可能性が高い」とか、「本人が公立校のカルチャーにあわず代替教育機関としてインターが最適であると考えている」という場合にはどうでしょうか。これらのケースについては文科省のHPでは特に言及されていません。個人的には、中長期的かつ客観的な視点からみたときに本人にとってインター進学がベストな選択肢であることを示せれば、それをもって「やむを得ない事由」として認めてもらえる可能性はあるのではないかと思っています。「教育」は、国のためのものでも、親のためのものでもなく、子どものためのものですから。(※とはいえ、これはあくまでも私の個人的な見解ですので、その点ご了承ください。)

ちなみに、文科省によれば、就学義務免除は当事者の判断でできることではなく、お住まいの市町村の教育委員会への「願い出」が必要だとか。「届出」でも「許可申請」でも「認可申請」でもなく、「願い出」。なんじゃそりゃ~という感じもしますが、許可する/しないという形で落としどころを確定するスキームは機能しないため、あえてこういう曖昧な言葉を使っているんだろうなと思います。

就学義務不履行により生じうる不利益

さて、ここまで読んでくださった方のなかには、「義務だとか不履行だとかっていうけど、インターに通わせたら何かペナルティでもあるの?」と疑問に思われた方もいるかもしれませんので、最後にその点について書いておこうと思います。

ネットで検索したところ、「インターに通わせて就学義務を履行しなくてもペナルティはない」という情報を複数見つけました。「本当かいな~」と思って学校教育法をみたところ、ばっちり罰則規定がありました。

学校教育法 第百四十四条  第十七条第一項又は第二項の義務の履行の督促を受け、なお履行しない者は、十万円以下の罰金に処する。
2  法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対しても、同項の刑を科する。

法律上は、「10万円以下の罰金」となっているんですね。実際には罰金が課せられるケースは皆無に近いのでしょうけど。

あとはこんな不利益も。

学教法においては、小学校等の課程を修了した者が中学校等に進学することを予定しています。これは、同法第45条に規定しているように、中学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育を施すことを目的としているからです。

このことを踏まえると、例えば一条校でないインターナショナルスクールの小学部を終えた者が中学校から一条校への入学を希望してきても認められないこととなります。インターナショナルスクールの中学部の途中で我が国の中学校へ編入学を希望する場合も同様です。(文科省HP

要するに、途中で「インターがどうも合わない」とか「英語での授業にやっぱりついていけない」とか「学費の支払いが苦しい」などという事態になったときに、受け入れてくれる公立の学校を探すのが困難だということですね。子どもには「教育を受ける権利」がありますので、最終的には何とかなるんでしょうけど・・・学校探しに色々苦労する可能性は捨てきれないと。ここは受け入れ先の公立校の校長先生や教育委員会によっても色々違うのではないかという気がしますが、うまくいかない可能性があるという点は認識しておいた方がよさそうです。

 

以上、インターナショナルスクールへの入学と就学義務の関係について、整理してみました。様々なリスクがある国内インター進学。我が家も帰国後の選択肢のひとつとして考えていないわけではありませんが、もし進学させるならば、生じうるリスクを的確に把握しヘッジしておくことが肝要だと感じています。


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